~くまもと畳表の原点に触れる~
八代でい草収穫を体験してみた話。
良質な畳表の代名詞、熊本県産畳表。その主産地は、言わずと知れた熊本県八代地方です。 畳の表替え(張替え)や新調など、我々畳店が毎日畳表をあつかう中で、熊本県産畳表は良質な畳表として欠かせない存在です。しかし、私たちは本当にその価値を理解しているのか。
ーその真髄をしらなければ、本当の「良さ」を伝えることはできないー
産地に行き、現場に触れることで、その良さの「真髄」をより一層理解できるかも知れない。そんな思いから、い草収穫の体験をしてきました。
今回の体験は、実際の農家さんの一日分の作業スケジュールに倣った、少しハードな内容。
い草収穫の最盛期は毎年6月後半~7月前半頃ですが、当日はまだ梅雨明け前なのにまさかの快晴・猛暑で、よけいに過酷な日程となりました。
※記事内容は平成27年7月9日~10日のものです。
~ 一日目 ~
まずは田圃へ。翌日の刈り取りに備えて、い草が倒れないよう支えている網を外します。
同時に、ハーベスタ(刈り取り機)が入るスペース分、い草を手刈りします。
昔は田圃全部をこの手刈りでやっていたのですから、その苦労は想像を絶するものがありますね。
午前中に刈り取ってあったい草を泥染めします。
この水槽の中には、染土という泥染め専用の土を水に溶かしてあります。この染土が、あの畳独特の香りを生み出してくれているのです。
乾燥中のい草。早朝から夜まで、約15~16時間かけて乾燥します。
この乾燥の仕方が中国産と決定的に違う部分で、八代では、い草の品質を落とさないようにゆっくりと時間を掛けて低温乾燥させます。
翌日早朝、このい草を取り出して、泥染めしたい草を乾燥機に入れます。
~ 二日目 ~
い草農家の朝は超早い。夜明け前・午前3時からのスタートです。
まずは、乾燥の終わったい草を乾燥機から取り出します。(釜出し)
釜出ししたい草は袋に詰めて、倉庫に保管します。このい草はすぐには畳表に織りません。乾燥の熱が取れ、染土と馴染むまで、ゆっくりと倉庫の中で寝かせます。
釜出し終了。後片付けも大事な仕事です(^^)
次は「釜入れ」です。前日泥染めしたい草を乾燥機に詰めていきます。午前6時頃、早朝作業が終了します。
朝日が顔を出しました。普段の行いの成果(笑) 、見事な快晴です!
次は田圃で作業。ハーベスタでい草を刈り取っていきます。晴天によく映えますね。
【動画】ハーベスタでい草を刈り取り。
今回の目的は「がっつりい草農家体験」ですので、作業内容も非常に濃いものになっています。
まだ午前中にもかかわらずの猛暑で、結構応えました。。
刈り取ったい草はコンテナへ積み替え。この状態で泥染め・乾燥を行います。
刈り立てのい草。目に鮮やかな緑です。ただこの日は天気が良すぎて、刈り取り後半では表面の水分がだいぶ奪われてしまってました。劣化を防ぐために、この後シャワーを浴びせておきます。
思わず持ち帰りたくなる(笑) 採れたてい草。
刈り取ったい草に、乾燥と温度上昇を防ぐため水シャワーを浴びせます。この日はとくに暑かったですので、重要な作業ですね。
【動画】い草にシャワーを浴びせている様子。
ここまでで、一日分の作業全て体験したことになります。
農家さんによって期間は違いますが、産地ではおおよそ約一ヶ月間この作業が続きます。
今回の体験を通して、農家さんの作業の大変さ、とくに「時間との戦い」がすごく印象付けられました。
い草の質を落とすことなく良質な畳表にするために、刈り取りはもちろん乾燥、泥染めなど全ての作業が綿密にスケジュールが組まれていて、息つく間もなく重労働が続きます。私は一日だけの体験で大変な達成感と疲労を味わいましたが、農家さんは最盛期にはこれが一か月間毎日続くわけです。本当に頭が下がりますね。
梅雨らしからぬ天気も手伝って、今回は本当に大変さを「身体」で学ぶことが出来たと思います。
体験終了後、今回お世話になったい草農家・上本さん夫妻(写真右・左)と記念写真。